すし銚子丸、「珈琲館」「ベローチェ」のC-Unitedと「強い店舗」とマネジメントを考える

2023年1月17日に実施した外食業界向けセミナー「高QSCを維持する『強い店舗』を作るための組織・現場マネジメントを考える」のレポート記事です。
株式会社銚子丸、C-United株式会社の店舗運営や教育マネジメントを担当されているお2人にリアルなお話を伺ったパネルディスカッションを中心にお届けします。

モデレーター ClipLine株式会社 金海(以下、金海)本日はありがとうございます。今回は店舗教育・マネジメントの最前線でお仕事をされているお二人に、チェーン展開をしている外食業界における重要なテーマについてお話を伺っていければと思います。
今回お話する主なテーマはこちらです。

 

 

回転寿司業態とカフェ業態ということで、各テーマでアプローチが違う部分ももちろんありますが、逆に「強い店舗」を作るために根底で共通する部分もあると感じておりますので、その辺りを深掘っていければと考えております。

株式会社銚子丸 おもてなし部 副部長 兼 研修指導課長 三浦様(以下、三浦)私たちは首都圏に回転寿司の「すし銚子丸」、フルオーダーの「すし銚子丸 雅」を始めとした92店舗を展開しています。
職人・板前を大勢抱えているのが我々の特長なのですが、よりサービスの部分も強化していくことを目的として作られたのが私が所属しているおもてなし部という組織になります。

C-United株式会社 営業統括部 兼 トレーニング部 部長 都築様(以下、都築):C-Unitedは、セルフサービス業態の「カフェ・ベローチェ」フルサービス業態の「珈琲館」、「カフェ・ド・クリエ」等、600店舗・8ブランドを展開しています。営業統括部とトレーニング部の部長を兼務し、オペレーションの開発と展開、トレーニングの実施を一貫して担当しています。

コロナ禍で求められたモデルチェンジと+αの対応

金海:どちらの業態でも大変な苦労があったと思うのですが、どのような状況だったのでしょうか?

三浦:レーン提供からオーダー対応、フルオーダー形式への移行という大きな意思決定を行い、推進している最中です。
また、板前やホールスタッフの人数の最適化や、受付システム、配膳などはロボットによる省人化も導入し、多くの現場で運用をしています。
とはいえバッシング(清掃をしてテーブルを整えること)にはどうしても人的工数も掛かってしまいますし、人手不足の解消も大きな課題となっております。

金海:回転寿司のレーンを廃止するというビジネスモデルのチェンジを始め、大きなチャレンジだったと思いますが、どのような変化が生まれていますか?

三浦:まずはロスの削減ですね。回転寿司業態では流す分売り上げが上がる部分もあり、どうしても一定数発生していましたが、フルオーダー導入後は削減に成功しました。
併せてタッチパネルへの移行により、以前は板前が暗記していたオーダーのミスもなくなりました。提供スピードなどの課題もありますが、概ねいい傾向が表れていますので、新店舗やリニューアル店舗含め回転レーンを廃止し、フルオーダーにする方向で推進しています。

都築:カフェ業態の中でもブランドごとにフルサービスとセルフサービスでやり方も異なりますが、何より対コロナの対応が始まってから約3年間、行政の指導内容や従業員・お客様の状況の受け止め方の違いなど、時期に応じてその都度敏感に、適切に対応する必要があったと考えています。そうした一律的ではない、ガイドライン+αの対応が求められていたなかで、ClipLineを活用して乗り越えられた場面も多くあり、導入効果を感じていました。

「人手不足」をどう捉え、向き合っていくか

 

三浦:先ほどお話したロボット活用での省人化と共に、採用方針の変更に取り組んでいます。今までは板前中心の文化で男性が多かったのですが、中途採用やパート・アルバイトの採用において、時短勤務枠の採用枠を増やすなど、女性の採用を強化しています。
また、それと並行して注力していかなければならない重要な要素として、早期の戦力化や人材定着に向けた取り組みがあります。ここについてはClipLineを活用しながら、教育時間の短縮、スマホ等でClipを視聴してもらうことでの短時間の教育を実践しています。
従来1年以上かかっていた握りの技術の習得を約半年で行うことができ、現場で活躍していただけるようになりました。

金海:現代の時流に合わせる観点でも働き方の多様性を受け入れるなかで、反面その方々をどのよう育成し、戦力化していくかはどの企業様でも課題になっていますが、「学びの仕組み化」で解決されているということですね。
C-United様はいかがでしょうか?

都築:カフェ、喫茶業態は外食のなかでは、まだ状況として良い方だと考えていましたが、やはりコロナ禍でこれまでの採用手法は困難になり、構造の変更が必要になりました。
採用部分も引き続き活動をしっかり行っていくのに加え、特に離職を防ぐ工夫への注力は重要ですね。
ロボットの導入テストも行ってはいますが、そうは言っても業態別の特長に合わせながら、「削ってはいけない部分」を考えなければなりません。外食業態で働く方はある程度「チームで働くこと」に対して価値を感じているはずで、仲間と一緒に働くことの楽しさを醸成しないと、退職防止には繋がっていかないと思うんです。
オペレーションを含め、テクノロジーと人の連動をポイントに、働く楽しさを感じてもらえることを重視しています。

金海:「削ってはいけない部分」の一例を具体的に教えていただけますでしょうか?

都築:研修は重要視していますね。ClipLineやライブ配信ツールを活用しつつ、リアルでの集合研修だからこその学びも多くありますので、WEB研修とリアル研修での学びをきちんと分けて定義づけ、スタッフにもその重要性を理解してもらった上で実施をしています。

教育と評価が連動する仕組み作り

金海:参加者からのご質問が多かったものですが、従業員の評価の指標をどのように置いているか、教育の方法やポイントやどの様な取り組みをされているかお聞かせください。
銚子丸さんは「真打制度」という独自のキャッチーな取り組みをされていますね。

三浦:はい、おととしの10月にClipLineを導入した際に、従業員のモチベーションUPの取り組みとして導入を進めました。元々評価についてはいろいろと検討していていましたが、うまくPDCAが回らず、社員の待遇につながる評価を明確に打ち出すことができていませんでした。
そんななかでClipLine導入時評価にも活用できないかと考え、業務の習得レベルと評価を連動させていく仕組みを作りました。楽しみながら進められるような工夫として、落語の「真打制度」に倣って、前座見習い、前座、二つめ、最後は真打と、習得につれてランクが上がっていく制度を作りました。

 

 

具体的な習得方法としては、「お手本動画」を作った上で、ClipLineの2画面再生を活用し、そのお手本を観て実践したものをスタッフに投稿してもらい、お手本と比較する、と言う反復です。お手本と同じような技術を身につけることができると、ランクが上がる仕組みになります。
この取り組みの推進にはエリアマネージャーやゼネラルマネージャーに先頭に立ってもらい、現在202名の真打がいます。パートさんでも2名の真打が生まれていて、先ほどお話したようにそれが時給UPと連動するような評価制度を積極的に行っています。

金海:非常に面白い取り組みですね。パートさんを含めた階層別研修を構築することで分かりやすく、「スキルアップ」を明示でき、そして何よりキャッチーなのが良いですよね。お手本を作ることによってベテランの階層も率先して取り組むことができ、バラつきも防止できる、面白い取り組みですね。
C-United様も「珈琲大学」という取り組みをされていますが、共通する部分があるのではないかと感じました。これはどのようなお取組みなのでしょうか。

都築:そうですね、私も三浦さんのお話を大変興味深く聞いていたのですが、我々も階層別の研修を「珈琲大学」という名称で行っています。
銚子丸様の考え方と同じで、活動や技術習得に応じた評価は非常に重要だと思っていますし、お手本となる、一番作法が上手い方が先頭に立って教えていくことは非常に大事ですね。トレーニングにおいては「手順」と「基準」を意識することが大切だと弊社では考えていますが、「基準」の部分はトレーナーとして確かな技術がある方が行うのが非常に重要なのは、銚子丸様と共通していて面白いなと思いました。
また評価の指標では、今までは本部の部長からアルバイトスタッフまで、一貫した指標が見えにくかった部分がありましたが、評価制度を見直し、繋がりのある目標設定やフレームワークを作成し、実施しています。
SVと店長の目標の連動性や、店長が追いかける目標とそのためにスタッフが行うべきことの擦り合わせを面談で行うという仕組みを作っています。

金海:個人の目標が全体の目標と連動すること、と言ってしまえば簡単ですが、出来るようでなかなか実践出来ないという企業も多いかと思います。それをうまく成立させるためには具体的にはどの様に取り組まれているのでしょうか?

都築:単月ごとの目標設定ではなく、半年~1年の中長期的な目標を作成し、スタッフの定期的な面談や日頃の業務中でその認識合わせを行い、齟齬がないような仕組みを作っています。

金海:お聞きしていて、どちらも「キャリアロングラーニング」を上手く行っていらっしゃるという印象があります。アルバイトから入社した方がスキルアップして店長・社員に成長していくまで、スキルの観点で具体的な階段を明示している点が両社とも共通点であり興味深いですね。

「教える側の教育」の重要性

金海:先ほどの質問とも重複する部分もあるかと思うのですが、教育のポイントについてもう少しコメントをいただけますでしょうか

三浦:真打制度を取り入れた時に、板前歴30年のベテランスタッフもClipLineに動画を投稿してくれました。これは個人的にも非常に嬉しかったです。そうしたメンバーが積極的に実施してくれたことで、若いスタッフも進んで投稿をしてくれる文化ができました。
その上で大事なのは、ClipLineの真打制度を導入したから教育が進む、というわけではありません。最後はやはりOJTです。
隣に店長、料理長、ホールの「女将さん」が寄り添って指導をすることは必ず行います。ClipLineを観たから終わりでは無く、「動画で観たものを実際に一緒にやりましょう」という掛け声はOJTを行う上で無くしてはいけないものだと思っています。

金海:先ほどの都築様の「削ってはいけないもの」のお話とも共通しますが、人と人との繋がりの中で、スキルを身につけ、お客様に喜びを提供していく。そうしたベースの中で、ClipLineのようなツールを上手く活用いただいているのが両社の共通点だと感じました。

都築様からは「トレーナーの育成が重要」と事前にいただいていますね。

都築:これは私も経験したことがありますが、塾講師や家庭教師のような教えることを生業としている業界でも、「教え方」の教育がなかなかされないんですよね。企業でも一緒で、業務の中で頻繁に教える状況が生まれるのに、体系だって「教え方」を教わる機会はなかなかないんです。ですので、トレーナーの育成には注力をしています。 ClipLineの活用にも繋がってくるのですが、トレーナーの重要な役割の1つとして、ツールを使った教育があると考えています。
必要とされているスタッフへのインプットや状況に応じて、どのようなツールをどう使い分ければ効果が生まれるかを理解して使えることがトレーナーに求められることだと考えています。それがある程度進んでいたこともあり、ClipLineはうまく使えるのではないかと感じていました。
また、トレーナーにとって重要なのは、実践を行う上で、何を学ぶべきなのかを定める目的意識だと考えていますので、三浦さんもおっしゃったように、OJTでの実践の場でどうトレーナーが導いていくかが大事になってきますね。

金海:ついつい盲点になりがちなこととして、教わる対象の事ばかり考えがちですが、教える側がバラバラだと進まない、と言うことです。海外ではTrain The Trainer(TTT)のようなトレーナーを教育するプログラムがありますが、忙しい現場ではそれが抜けがちになってしまうのはよくある話なのでしょうね。

店舗の個性を生み出すには「基準」を超える仕組みが必要

金海:続いてもう少し引いた「店舗」と言う目線でのマネジメントの話なのですが、「チェーン店における各店舗の「個性」の出し方と適切なマネジメント」と言うことで、銚子丸様は非常に「個店」に対しての取り組みが特徴的ですし、C-United様も店舗の立地によって店舗のスタイルが違うと思います。この辺りをお聞かせください。

三浦:「あの板前に会いたい」「あの女将さんに会いにきました」と言ってわざわざ来店してくれると言う話も実際に聞くのですが、そういった店舗・スタッフ単位でのファン創出を目指しています。
入荷する食材の違いに応じて店舗ごとにおすすめの商品も違い、SNS等を活用して店舗ごとに展開することで「この店舗にいきたい」と言うお客様の行動を目指しています。
グランドメニューにはマニュアルがきちんと存在し、手順・動作・道具もその通りに実施しますが、料理長のオリジナルメニューに関してはその幅を広げて、個性を活かすように指導し、その中で生まれた好事例はClipLineに上げ、店舗間で共有することもしています。

店舗間での共有でさらに一例をあげますと、「QSC」のC=クレンリネスの部分では、衛生マニュアルに沿って各店舗で取り組んでいる衛生について、例えば手洗いが基準よりも上手なスタッフの動画を共有することで、マニュアルを高いレベルで超えるものを共有したりしています。

金海:なるほど、個性を存分に出すためには前提として会社が求める基準があり、それを大幅に超えることでお客様を惹きつける個性を生み出されているのですね。

都築:銚子丸さんの従業員さんが「ブランド」になっているというお話は非常に感心しましたね。
当社は8つのブランドがあり、その中でも50年以上続いているものが2つあります。長年運営するなかで、業態によってはチェーンとしての統一感という基盤が揺らいでしまっていた時期もありましたが、まずはそれを集約し整えて、その上で「ローカルストアマーケティング」として各店舗に合った仕組みを取り入れています。
今後はそれをさらにどう拡げていくか、どう個性を出していくかがポイントだと考えています。

店舗の仕組みを構築し、従業員モチベーションの向上を生み出す

金海:もう少しマネジメントについてお伺いしていきます。店舗評価や店舗での取り組みの共有方法について伺えますでしょうか?

三浦:原価や売り上げ、人件費などの定量目標はもちろんありますが、今注力して取り組んでいるのが店舗の人材教育の観点の評価です。店長を任せられるような人材をどのくらい育成できたのかなど、そうした教育の指標を大きく置きたいと考えています。

教育のためにはモチベーションUPの仕組みが重要となりますが、そのための施策として「ClipLine サーベイ」を使ったアンケートによるお客様の声の可視化があります。
以前は紙のアンケートを実施しておりましたが、ClipLine サーベイを導入したことでQRコードの読み取りから1分程度で即座にアンケート回答が可能になり、回収率も2倍に上がりました。回答内容はすぐにスタッフに共有され、お客様からお褒めの言葉をいただいたスタッフには食事券をプレゼントする施策も行っています。

改善のための施策と言う意味でも、リアルタイムで届くことは重宝しています。例えば以前「蟹汁がしょっぱかった」というご指摘があり、それをスマホで店舗と別の場所にいたエリアマネージャーが確認し、店長に報告すると、店長が直ぐにお席をまわり、蟹汁を交換した、と言う事例もありました。

金海:定量評価だけでなく、人材をどの様に育てていったかが組み込まれているのは面白いポイントですね。顧客の声を通じて改善活動だけでなく、スタッフを褒める仕組みを作られているのもモチベーションUPに非常に効くと感じました。
都築様はいかがですか?

都築:モチベーションをあげる上で大切なのはトレーニング力だと考えています。トレーニング力を定量化する際に重要なのが知識量とコミュニケーション頻度です。それを測る指標として、我々もClipLine サーベイを活用していますが、非常に効果的だと考えています。

ClipLineの活用に関しては、私はClipLineは教育プラットフォームというわけでは無く、「動画型マネジメントシステム」であることがポイントだと考えています。
QSCのチェック機能に加え、社内共有でスタッフのモチベーションを高めたり、情報が確実に全スタッフに伝わっているかを見える化するなど、店舗に関わる仕組みを構築していると言う意味で、まさしく「動画マネジメントシステム」だと感じており、そうした用途で確実に活用するのが店舗運営にとってポイントになっていると感じます。

金海:ありがとうございます。両社とも店舗マネジメントにまさにワンストップで活用いただいており、大変嬉しく思っています。

マネージャーの「腹落ち」、納得感が最も重要

金海:続いてこれも非常に事前の質問が多かったものですが、「新しい取り組みを落とし込む際のコツ」について、これに関しては実は事前の回答が両社非常に似ておりました。

 

 

三浦:現場に近いマネージャーの「腹落ち感」がもっとも大切だと考えています。マネージャー会議の場で、本部から一方的では無くしっかりと議論を行い、巻き込んでいくことが重要です。納得するとスピードが2倍近くなる感覚がありますね。

都築:まさにおっしゃる通りで、我々は少し表現が違うのですが「店は店長、会社はSV」という考えです。SVがいかに納得し、会社の言葉として現場に説明できるかが重要だと考えています。導入することがゴールでは無く、目的を持って活用したいと考えていますし、それに納得してもらうことで、現場にも伝わっていくのだと思います。

金海:ここまで伺ってきて、重要なポイントを3つにまとめてみますと、

  1. キャリアデザインを明確にすること
  2. トレーニングは本気でやれば会社が変わる
  3. 変えるならば、上から変えていく

ということだと思います。非常に実感をともなったお話でした、ありがとうございます。

ブランドを作るのは”人”

金海:最後に、今後に向けた課題や推進していきたいことを教えてください

三浦:魚価が上がり、業界全体として難しい状況のなか、ブランドや店舗の価値を上げ、QSCを高めていくのは”人”だと改めて感じています。
離職を防ぐための取り組みにも効果は出始めており、さらに社内体制を整えていきたいと思います。コロナ禍をきっかけにスタッフの働きやすさについても見直す機会になり、それが好調な売上に繋がっているので、これからも人を大切にした文化を保ち続けていきたいです。

都築:今日のお話も受け、ブランドの強化をさらに進めていきたいと感じました。コロナ禍によってマーケットはその以前とは間違いなく変化していきますが、その中で新たなマーケット、カフェの文化を創造していきたいと考えています。そして「人がブランドをつくる」というということを大切に、これからも取り組んでいきたいと考えています。

金海:ありがとうございます。両社の目指す先に向けて、ClipLineとしましても更にご支援をさせていただきます。本日はご登壇ありがとうございました。

ClipLineについてのご紹介

金海:最後のまとめに変えまして、私の方から「外食現場の課題解決とマネジメント変革のステップ」というテーマで、お話させていただきます。

我々が考える多店舗・多拠点ビジネスの構造的な課題というのはこの絵に表せるものだと思っております。

 

 

一つ目が上の絵ですが、「ピラミッド構造」です。

物理的に拠点が分散しているなかで、何か新しいことをやっていこうと思うと、情報を伝えても、伝わったことが現場でできているかどうか確認しよう、できていなかった時にアドバイスしようと思っても、どうしてもここに人手が介する必要が出てきます。

これによって、組織が大きくなるにつれてバラツキが大きくなり、スピードも落ちる、という問題があります。

もう一つの問題は左下の絵ですが、現場、つまりは店長、スーパーバイザー、エリアマネージャーと呼ばれる方から見ると、ピラミッドではなく、こうした砂時計に見えています。

本社のさまざまな方から、色々な事が色々なタイミングで飛んでくる。
それを現場に伝達しないとならないのですが、現場で働く方もアルバイトの方もいれば、社員の方もいらっしゃる。新人もいれば、ベテランもいる。若い方もいれば、年配の方もいらっしゃる。
かつそういった方々がシフトでバラバラのタイミングで入ってくる、という状態です。この状態で正しい情報を、正しい人に、正しいタイミングで伝えるというのは、実は非常に難しい、というのが現場で起こっている問題です。

その結果、何が起こるかというと、右側の絵のように、経営の視点から見ると、お店によってバラツキが生じることになります。 逆に言えば、これを改善できれば、経営には非常に大きなインパクトが出せます。ClipLineはこの改善の部分に貢献したいと考えています。

 

 

ClipLineは組織実行力を高めるマネジメントシステムです。
アルバイトの方も含め、ひとりひとりにIDを持たせ、それによって誰が何を見ていて、どういうことが出来るようになったかをきちんとトレースしていく、という仕掛けになっています。

現在サービス業を中心に約15,000店舗、41万人がご利用中ですが、我々の特徴というのはご利用者数よりも、それによって財務成果創出につながる数字での成果が生み出せる点にあると考えております。

 

 

銚子丸様、C-United様のお話のように、教育にうまく使っていただくことで、その企業さんの一番教えるのが上手い方に出ていただいて、その方のノウハウに沿って教育カリキュラムを組み、ClipLineに設定する。これによって、OJTの「やって見せる」部分をほとんど置き換えることが出来ます。
その後実践内容のチェックをし、アドバイスする部分を対面で行っていただくと、教育時間が30%減る、といった効果が出ます。

また、先ほど「腹落ち」という話がお二人からもありましたが、現場がやるべきこと、その目的を理解し、「なぜそれをやるのか」「お客さんにどうなってほしいのか」を理解したうえで実行すると、売り上げは全然変わってきます。それによってこちらにあるような「重点商品の売上が目標に対して161%に」「粗利益が改善」「新商品の投入サイクルが90日から半分に」といった結果を出すことができるようになります。

また、何か施策を落とし込むと、それが本当に出来ているかどうかは、スーパーバイザーの方、エリアマネージャーの方が現場にチェックしに行くことが必要ですが、それをデジタルで実現できるため、マネジメントコストを最適化していくことが出来きます。

本質的な問題はサービスレベルの「ワニの口」

本質的な課題というのは人口減少のなかで、サービス業にもワニの口が広がっているということです。

 

 

上の図の右上の矢印というのは、人が減れば競争は当然激化する。そうなればサービスレベルを上げるしかない、という話なので、目指す姿はどんどん難しくなっていきます。

それに対して、人が減るというのは働き手が減ることを意味していますので、人材の質や量を確保するのが困難になっていく。

つまりサービスレベルはほおっておくと下がっていく可能性があります。「ワニの口」のように、時間とともにどんどんどんどん、ギャップが大きくなっていくというのが本質的な課題だと思っています。
これを人手だけで埋めていくのは困難なため、デジタルで行うことで解決するのがClipLineです。

もう一つの着眼点で言いますと、目指す姿がお客様に届いているんだろうか、というのも大きなポイントです。
このために提供しているのが先ほど三浦様、都築様にもお話いただいた「ClipLine サーベイ」というものになります。

 

 

施策を作ってアクションに分解して、現場に落とし込んで、現場で実行して、お客様が評価して業績に反映される。これが一連の流れなんですけれども、「ちゃんと現場に伝わったんだろうか」「伝わったとしてもそれやってるんだろうか」「やっていたとしてもそれをお客様が評価してくれているんだろうか」実は見えないケースが沢山あります。
うまくいっていれば良いのですが、うまくいっていないときには施策が悪かったのか、実行が悪かったのか、どっちか分からないというケースが結構あります。

こういった問題を解消するために「ClipLine サーベイ」はお客様の声をすぐに集めるという仕掛けになっています。
大きな特徴は即時通知・即時改善という点で、「本部」にも「現場」にも、あるいは「ミドルマネージャー」にも、すぐにその場で情報が届く形になっています。

なので、本部から見れば、「施策が思ったように実行されていないから伝わっていないんだな」や「施策がきちんと実行されているにもかかわらず、商品制作がまずかったんだな」ということがすぐ分かりますし、実行がまずかった部分については、店長さんやミドルマネージャーの方にすぐ伝わるため、すぐに改善が出来る、という形になっています。

先ほど銚子丸様の三浦様からお話しいただきましたが、「カニ汁」の件はまさにその典型例かと思います。
三浦様から以前お伺いした際、お店の中のすでにカニ汁をお召し上がりのお客様に交換を申し出た、というお話を伺ったんですが…。

三浦:怒られる、という意識が当然出てくると思うのですが、そこは店長が勇気を持って「すぐに交換します」ということで迅速にやってくれました。ここでもしそうした対応がなく、そのままお客様が帰られたら、帰られたお客様は「しょっぱいなあ、銚子丸のカニ汁。もう行かない」ということになってしまうのが一番怖いと店長は思ってくれたのでしょうね。
逆に「すみません、今お召し上がりのカニ汁は、こちらの基準ではないカニ汁です。本当に美味しいカニ汁を召し上がっていただきたいので、交換させてください」と言われると、ファンになりますよね。

金海:こういった動きにもつながる形で銚子丸様は使っていただいております。

もう一つ事例をご紹介しますと、ペッパーランチというステーキを気軽に召し上がることができる業態の企業であるホットパレット様でも、「ClipLine」と「ClipLine サーベイ」を導入いただいています。
そこででた興味深い結果が、サーベイで回答を集めると、96%がお褒めのお言葉だったということです。どうしてもお客様の声というと、クレームに近いようなご指摘が気になるんですが、大半がお褒めのお言葉だと。主に現場のモチベーションアップのためにご活用いただいているというケースです。

 

最後のまとめになりますが、結果を出そうと思うと、よく言うのは「戦略×実行だ!」という言い方をします。
ただ、サービス業、特に飲食業で考えますと、どうしても商品あるいはサービス、食べ物がお客様に届くまでに多くの人手を介することになります。そうすると実行のウェイトが特に大きくなっていくかと思います。

そういったところを解決していくために、先ほど申し上げた着眼点を考えてみるといいのではないか、つまりは「ピラミッド構造」、それは現場から見ると、砂時計の形になっています、といった話や、現場にお客様の声をすぐに届けることによってPDCAを回す、といった着眼点があるのではないか、と思います。

我々は、こういったデジタルを使って「ワニの口」を閉じていこう、という話をよくしており、突き詰めれば目指す姿はピンチをチャンスに変えていく「組織機動力の獲得」とも言っております。

 

ただそこに至るには、山登りと同じですので、いきなり頂上にヘリコプターで行く、という訳にはいきません。一歩ずつ登っていく必要があります。

この「登り方はどうするのか」という話ですが、さまざまな企業様のご支援をしてきた中で、我々にノウハウがございますので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。