「LUFLOS、全社に広げたマネジメントDXによる売上アップと販売員の意識・行動変容」
LUFLOS株式会社 松丸 龍 氏
モデレーターClipLine株式会社
執行役員 エンタープライズ営業部 部長 齋藤 誉
カスタマーサクセス部 マネージャー 小田切 美香
小田切ーまずはLUFLOS様のビジネスについて、簡単にご紹介いただけますでしょうか?
松丸様(以下、松丸)ー弊社は主に宝くじ、スポーツ振興くじ「toto」の販売事業を行っております。宝くじの仕組みについて説明申し上げますと、総務省で許可の元、各自治体が発売しているものですが、販売についてはみずほ銀行さんに委託され、さらにそこから私どものような民間の事業者に再委託される形になります。
価格や商品構成を独自の裁量で変更ができず、TVCMなどのプロモーションについては受託銀行が実施している、など、国の関与の元行われる事業ということでさまざまな制約がある中で事業を営んでいるという前提がございます。
齋藤ーそれではここから、LUFLOS様の変革ストーリーについてお話を進めて参ります。
齋藤ーここ数年のLUFLOS様の改革を並べさせていただきました。
2018年には収益性向上のための不採算店舗閉店や人材評価の見直しなどの見直しから始められ、2020年はマネジメント改革としてClipLineも活用いただきながらトップラインの引き上げに成功、2022年にはマネジメント改革を全社に広げDXを拡大されていらっしゃいます。
この中から今回は、2020年以降の組織変革・マネジメント変革を中心にうかがっていければと思います。
小田切ーまずは業界の状況について伺えますでしょうか。
松丸ー業界全体の売上は、2000年代に1兆円を超え、当時は1兆円産業として非常に活気のある業界でした。しかし2000年代後半より、ジャンボ宝くじの売上減が鮮明化していきまして、近年では業界全体売上が8,000億円を割り込むという厳しい状況にあります。
従来年間売上の大半を占めていたジャンボ宝くじの人気低迷の原因としては、2000年以降、ロト6・ロト7・totoBIG・MEGABIGといった高額賞金を狙える商品が販売開始され、『高額賞金の特別なくじ』というジャンボ宝くじの商品性が埋没しつつあること、また、上の世代の方々に比べ『安定志向・堅実志向』といわれる若年層になかなかパイを広げられないことにあると考えています。
小田切ーこうした市況の中、LUFLOS様ではマネジメント改革に取り組まれました。当時はどういった課題があったのでしょうか。
松丸ー組織の状況として、2018年頃まではエリアマネージャーとして新卒の正社員を採用していました。そうした店舗経験や売り場経験があまりないメンバーが店舗にいるベテランパートや新人パートをマネジメントするのですが、むしろ現場に詳しいのはパートの女性たちなんですね。
これまでは体系的な教育カリキュラムもなかったので、それぞれの店舗でベテランパートが新人パートを教育するのが常態化しておりました。
教育指導が十分に行われないなかで、各販売員が独自のオペレーションを行っている状態も散見される一方で、
エリアマネージャーが教える内容が異なっていたり、あるいはその独自のオペレーションがクレームに繋がるということもありました。
こうした課題がある中で、本部では人事制度など評価・育成に取り組んでいたのですが、そんななかで前任者が見つけてきたのがClipLineで、主に教育・オペレーションの標準化と、重点施策コミュニケーションに活用しました。
小田切ーその結果、どのような成果が生まれましたでしょうか。
松丸ー私が担当していた導入エリアで売上1.3倍を実現できました。
2020年4月に千葉・茨城県内17店舗にClipLineを導入致したのですが、特に取り組んだのがジャンボミニという商品の販促強化です。ジャンボミニという商品は、2013年に発売された商品ですが、「ジャンボより賞金額が低額だが高確率なくじ」という特徴をもつ商品です。
一方で、その商品性はあまり消費者の方に周知されておらず、販売員からは「お勧めしづらい」という声があるなど、販売数が伸び悩んでいました。
そこで、CLipLine導入のタイミングで、ジャンボミニの販売のテコ入れを企図し、経営者メッセージ・販売促進例の動画を配信の上、ジャンボミニに焦点を置いた販促強化施策を展開したところ、ミニの売上昨対比で最大134%という結果を達成しました。
これを受け、2021年4月より、ClipLine導入店舗を合計44店舗に拡充しました。
小田切ーありがとうございます。導入の流れについても伺いたいのですが、こちらがLUFLOS様の導入と活用方法を図示したものになります。
2020年の1年間のトライアル活用を経て、先ほどの通り売上1.3倍を実現し、21年からエリア拡大というご判断をいただいています。
まず17店舗でのトライアルに取り組まれた際の目的と進め方について教えていただけますでしょうか?
松丸ー全店展開の前に、ClipLine導入の成功事例創出のため、私のエリアで先行導入という形でトライアルを行わせて頂きました。
導入前には私が販売員1人1人に直接コミュニケーションをとり、ClipLineの導入意図、店舗をこれからどうしたいかというビジョンを販売員と共有しました。
特に、ジャンボ宝くじは年5回あるのですが、導入後はジャンボごとに販促強化施策を展開し、施策終了後にClipLine上でレポート提出をしてもらい、それに対して、私と当時の専務からコメントの返信を行いました。
やはり、導入直後にはClipLineの取組みに否定的・消極的な販売員が一定数いましたが、双方向的なコミュニケーションを重ねることによって、少しずつ主体的に取組んでくれる販売員も増えてきまして、販売員・ほかのマネージャーの意識の変化も感じることが出来ました。施策の効果も予想以上に数字に表れてくれて、非常に有意義なトライアルとなりました。
小田切ー2021年の次のフェーズでは2エリア拡大し、合計で3エリア44店舗となりました。こちらの意図も教えてください。
松丸ートライアルでの、ClipLineの取組みが非常に効果的だったため、その輪を広げるべく、先んじてさらに2エリア導入店舗を拡充致しました。どちらかというと勤続年数の長いマネージャーの方がこの取組みに懐疑的・消極的だったので、私と同年代のマネージャーのエリアに拡大し、私もプロジェクトリーダーとして他エリアの支援にあたりました。
小田切ーそれではここでその時点、導入初期での用途を具体的に取り上げていきたいと思います。
1つ目は「教育・オペレーションの標準化での活用」です。どのような動画を作られていたのでしょうか?
松丸ー販売員のオペレーションの標準化を企図し、宝くじに関する基礎知識や販売員としての姿勢、来店時のオペレーション、店舗のクリンネスについてなどをそれぞれまとめた動画を制作しました。
これらは既存スタッフの業務見直しと新人スタッフの業務習得の際に、たくさん見てもらいたいと思い作成していました。
また、機器端末の操作に関する動画も作成し、よくある機器のトラブルなどを事前に動画にしておくことで、販売員自身でトラブル対応出来るようにしています。
小田切ー2つ目の「重点施策の徹底・コミュニケーション」については、大きく3つの用途を具体的にご紹介させていただきます。順にご説明いただけますでしょうか?
松丸ー1つ目はクリップによる施策の落とし込みです。販売促進例のインプットの配信だけでなく、前回の施策の結果の振り返りと、次回の施策に向けての経営者メッセージ、さらには好事例共有として、実際に主体的な接客・販売を行ってくれている販売員へのインタビュー動画も配信していました。
2つ目としては、施策展開時に途中経過と数値的な状況を適時配信していました。以前からこういった情報はFAXで担当店舗に送付していましたが、全販売員が確認していたかどうか、また、数値を提示することによって、販売員がどういった反応をしているかわかりませんでした。
しかし、ClipLineを通じて配信することで、販売員がしっかり確認してくれていることができていますし、施策終了時のレポート提出によって、販売員の反応を拾い上げることも出来ています。
数字を提示すると、一定数の販売員が、プレッシャーを感じたり、売上規模の小さい販売員がモチベーション低下させてしまったりという反応が見られましたが、そういった販売員にはコメント返信において、『数値ノルマを課すつもりは一切ないので、参考数値程度に見て下さい』であったり、『大事なのは店舗利益であって、当売場はしっかり利益確保が出来ている優良店舗ですよ』といった、数字に対する拒否反応を取り除くべく、コメントを返しております。
一方で、適時、数値的な状況を確認してもらうことにより、売上を意識したり、数値目標を自己目標化してくれて、目標の達成にやりがいを感じてくれる販売員も増えてきているように感じます。
このコメント返信が3つ目の用途になります。各販売員へのコメント返信は、なかなか時間を要するものですが、ClipLineの導入目的の一つが、現場との双方向的なコミュニケーションの実現なので、かなり力を入れている取組みの一つになります。
小田切ーそれでは、2022年の今年度に入ってからの全社展開について伺いたいと思います。当時、ClipLineについてどのようなお話が社内で上がっていたのでしょうか。
松丸ー3エリアで導入していたClipLineですが、実は社内で、一部だけ継続するのは中途半端なので全店導入するか、きっぱりやめるかという話がありました。
当然私は全店導入を推していました。というのも、すでにClipLineを利用しているマネージャーはClipLineなしで効率的なマネジメントができるとは思っていなかったからです。
一方で、社内では、
・他のマネージャーが使えるか否か
・マネジメントの型が異なるため、イメージがしきれない
・店舗の販売員に「仕事が増える」と思われる
などの声も上がってきました。
小田切ーそうなんですね、結果、今では無事に全店導入をされておりますが、社内でどのように進められたのでしょうか。
松丸ー経営陣への提案と、社内の他マネージャーへ、ClipLineの必要性とマネジメントにおける重要性を説明しました。
ClipLineの成果を改めて棚卸した時に、大きく2つポイントがあると思います。
1つが本部マネージャーの型づくり・底上げができたこと。2つ目が売上直結の成果。
こうしたなかで、経営陣へはマネージャーの働き方が変わり、一体感づくりに寄与するツールだと説得しました。冒頭で紹介した通り、市場全体が右肩下がりで、当業界は提供できる商材が限られているため、これからはマネジメント力が勝ち残っていくという提案は経営陣に刺さりました。
またClipLineにキャンペーンを乗せたものは、しっかり売上が上がっているので、投資対効果も図りやすかったところもポイントでした。他マネージャーへの巻き込みについては、少なくとも臨店工数が確実に減ることをアピールしました。
なかなか100%賛成というわけにはいきませんでしたが、担当エリアの業績が上がってくることで、これから納得度も高くなるかなと思っています。
齋藤ー実際に、全店展開した効果はいかがでしょうか。
松丸ー全店展開してから利用開始となったエリアでは、さっそく神奈川エリアの売り上げが伸び、売上1位に飛躍しました。
ほか、従来取り組んでいたサマージャンボ2022も売り上げは昨対越えを実現しました。
サマージャンボでは、当初売れ行きが怪しかったんですが、そこを検知して、ClipLineのアンケート機能を使って全店舗にアンケートを取りました。
全店舗でのアンケートを見て、注力商品やトーク・装飾などを一気に転換し、そこから急速に売り上げが戻っていったので、ClipLineを活用してマネジメント全体がPDCAを早く回せるようになったと思います。
齋藤ー明確な数字の効果があったんですね。定性的な側面についてはいかがでしょうか。
松丸ーマネージャーと販売員の意識改革につながっています。
これまで店舗への商品供給など物流面で逼迫していたところ、店舗づくりや人材育成の意識が向上しました。
というのも、販売員の意識改革も大きく、臨店時の会話が大きく変わったんですね。
同じエリアの別店舗の業績や、別エリアの店舗の業績や店舗装飾やトークなどへの関心が高まり、店舗間での競争意識が非常に上がりました。
齋藤ーそれでは全店展開後のお取り組みをご紹介いただければと思いますが、まず、全店導入時は説得が必要だったとのことですが、全店導入後も利用率が非常に高い水準に保たれていますね。
松丸ー店舗開店時の出勤報告として活用しています。この取り組みにより、出勤時に必ず1回はClipLineを扱うという機会を作り出せています。 そのほか、定期的に配信をしている物を見ていない人に対しては、各マネージャーが店舗臨店時に、積極的に見るよう促しています。
小田切ーお取り組みについて、大きく2つの用途をご紹介いただきたいと思います。まず1つは「従業員のベストプラクティス教育」についてお願いします。
松丸ー発売中の商品についての説明の仕方や、特に推して販売をしたい商品のトーク模範例、発売終了目前の商品をおススメするためのトーク模範例動画を作りました。新しく採用した販売員へは一つのヒントとして、ベテラン販売員へは自身のトークとの比較材料として活用しています。
小田切ー続いて「重点施策の落とし込み」ですね。発売期間の開始から終了後の各段階でお取り組みをされているようですね。
松丸ー重点販売商品であるジャンボ宝くじの発売初日には、各店舗の装飾をClipLineへ投稿してもらっています。店舗では自店の装飾との比較として活用し、マネージャーは装飾が正しく掲示されているかの確認として活用しています。
発売期間中には、全店舗の現段階での売上状況を一覧にまとめた資料を全店舗へ配信しています。
自店の売上状況の把握だけではなく、同エリアの他店舗や他エリアの売上状況も把握してもらい、店舗間での競争意識に発破をかけています。
そして発売終了後には、全店舗の最終結果を一覧にまとめたデータを共有しています。
またそのうえで、個々人での取り組み姿勢や店舗単位での取り組みについての振り返りや、発売期間中のお客様の動向など、現場の意見を拾い上げる施策も行っています。
小田切ーさきほど、サマージャンボの施策の時にアンケートを活用したと伺いましたが、どのようなステップで実施頂いたのでしょうか。
松丸ー発売前に毎回商品分析を行い、セールスポイントとなる点を抽出したうえ、それを装飾POPやセールスポイントとして、各店舗へ落とし込みを行っています。
今回のサマージャンボでは、ジャンボミニに重点を置き、販促強化を進めていきましたが、発売後1週間を経過したあたりでの売上状況があまりよくありませんでした。
店舗への臨店時にも、あまりお客様の反応がよくないという声が多数の販売員から聞かれたため、急遽、全店舗へ自店のお客様の反応はどうなのかというアンケートを展開しました。
アンケートを集計すると、直近のジャンボミニとは商品特性が変わり前後賞が無くなったことによるネガティブな影響があるという意見が多数あり、ジャンボミニではなく、前後賞のあるジャンボへ重点販売商品を変更し、装飾やセールスポイントを一掃し、再落とし込みを行いました。
発売後1週間という早期に課題を見つけ出せたうえ、ClipLineでのスピーディな情報共有により、なんとか昨対超えが達成できました。
小田切ーアンケートについては、ClipLine上で行うことで、普段販売員の皆さんが使っている端末でそのままアンケートなどに回答いただけるので、回答もあつまりやすかったと思います。
齋藤ー最後に、今後のLUFLOS様のDXのお取組みがございましたら教えてください。
松丸ーClipLineとの契約をきっかけに導入したiPadをさらに活用し、勤怠システムや販売管理システムのアップデートの落とし込みなど、DXをさらに加速させていきたいと思っております。
また、数字選択式宝くじやスポーツくじの新商品「winner」など、販促のさらなる強化と従業員が働きやすい環境をつくっていきたいと思います。