人的資本経営で抜けがちな「ROI」視点
ポイントは「可視化」

<対談セッション②>
「人的資本経営」実現のために経営者に求められる
データ活用の視点と発想とは?

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 岩本 隆 氏

 「『人的資本経営』実現のために経営者に求められるデータ活用の視点と発想とは?」には、慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授、ClipLine株式会社からは金海憲男(取締役 COO)、半田豊和(執行役員 CDO)が登壇した。

 昨今バズワード化している人的資本経営。特に重要性が高いのがサービス業とされる。サービス業の利益は「スタッフのサービス」から生み出されるからだ。

 「テクノロジーによる効率化が進んだことで、通り一遍の生産性向上は頭打ちを迎えつつあります。サービス業を中心に各企業がこの先に進むには、より『人』の力が重要になっていくはずです」(岩本氏)

 人に投資し、これまでにない企業成長を目指す人的資本経営。岩本氏は人的資本経営のポイントとして、人材への投資における「ROI」を見ること挙げる。関係省庁の旗振りもあって日本企業でも人的資本経営の機運は高まっているが、設定されるKPIや目標が、企業の成長と結びついていないことも多いのだという。

 背景には、データの蓄積や整理が追い付いていない事情がある。人的資本を巡っては、従業員エンゲージメントスコア、研修などに投資した金額、ウェルビーイングの指数といった非常に多くのデータが存在する。特にサービス業では人材の流動性が高いケースも多く、定量把握が難しい。拠点ごとにデータが点在しているのも問題だ。

 ClipLine株式会社が運営する「できるを増やす研究所」でも、データ活用に関する課題が浮き彫りになっている。同研究所の調査によると、「データが足りない」を筆頭に、個別の部署へデータが偏在していた李、現場でのデータ活用が進んでいなかったりといった悩みが見えているという。各種調査を基に、人的資本経営経営のポイントについて、金海COOは次のようにまとめる。

 「人的資本経営では、人材への投資が結果につながる仕組みの構築が重要です。そのためには、社内のあらゆる『つながり』の可視化が必要で、デジタルツールの出番だといえるでしょう」

 各社が直面する課題に対して、ClipLine株式会社では「ABILI Board」を中心に支援している。同サービスを活用すれば、データを集約するだけでなく、人材ごとのスキルや稼働時間といった切り口で拠点ごとの状況をアクチュアルにダッシュボード化できるという。どの施策がどういった成果に結び付いたかを簡単に見られるため、投資効果を見ながら柔軟な人的資本経営をかじ取りする上での一助となるだろう。