株式会社すかいらーくレストランツ様
AIエージェント活用事例

すかいらーくレストランツ2,600店舗で稼働
外食現場のナレッジをAIエージェントで即答化

  • AIエージェントで現場ナレッジを即答化
    約2,600店舗のスタッフが「同僚に聞くように」質問できるキャラクター型AIを導入し、
    マシン故障や社内規定など店長・本部に集中していた問い合わせをその場で解決する仕組みを構築
  • 自社マニュアルを軸とした設計で業務利用に最適化
    ABILI Clipに蓄積された自社マニュアルを最優先で参照する設計により、
    回答の約8割が自社ナレッジに基づくものとなり、汎用AIに頼らず現場のオペレーションに沿った応答を実現
  • 検証期間と比較し利用回数が約7倍に拡大
    全店展開を機にAI活用が広がり、現場の業務の一部として定着。マニュアル資産が整備されていたことが、
    立ち上がりの速さの背景に
飲食チェーンの現場では、新しいスタッフが日々加わり、外国籍のメンバーも増え続けています。「マシンの調子がおかしい」「身だしなみの規定はどこまで認められているのか」──こうした問いに、店長や本部の担当者が一つひとつ応じ続ける運用は、もはや限界に近づきつつあります。

すかいらーくレストランツ様は2026年4月、ガストやジョナサンなど全約2,600店舗に、ClipLineのAIエージェント「ABILI Pal」を導入されました。スマートフォンやタブレットから「同僚に聞くように」質問できるキャラクター型のAIエージェントで、現場のスタッフが抱える疑問に、その場でチャット形式で応答する仕組みです。

本記事では、なぜABILI Palが選ばれたのか、現場でどのように使われているのか、そして多店舗経営という大きな枠組みのなかでこの取り組みが何を意味するのかを、ClipLineの視点から解説します。

外食チェーンの構造的課題

飲食チェーンの現場で業務知識(ナレッジ)が抱える課題は、構造的に3つの層に分けて整理できます。

第一に、現場メンバーの構成変化です。短い期間で新しいスタッフが入れ替わる現場では、新人が加わるたびに同じ説明を繰り返す必要があります。店長やトレーナーは教育に多くの時間を割き、結果として店舗運営の他業務にしわ寄せが及んでいます。

第二に、スタッフの多様化、特に多国籍化です。複数の母語を持つメンバーが同じ店舗で働く光景は、もはや珍しくありません。日本語のマニュアルだけでは伝わりきらない場面が増えています。

第三に、「同じ問い」が繰り返される時間的コストです。「この機械が動かない」「この場合、どう対応すればよいか」──こうした問いは、店長や本部の担当者へ集中します。一つひとつは数分でも、店舗数と頻度を掛け合わせれば、本部全体では月に膨大な工数が消費されています。

いずれの課題も、「ナレッジは社内に存在しているにもかかわらず、必要な人が必要な瞬間に取り出せていない」という同じ構造に行き着きます。

自社のナレッジを軸に回答するAIエージェント—ABILI Palの設計思想

ABILI Palは、ABILI Clipに保存されている文章マニュアルや動画を学習データとして活用し、現場スタッフの問いかけに対してチャット形式で即答するキャラクター型のAIエージェントです。画面に常駐するキャラクターをタップして、スタッフは「同僚に聞くように」質問を投げることができます。

特徴的なのは、単なる検索ではなく、問いの「真意」を読み取って答えにつなぐ点です。たとえばスタッフが「コーヒーマシン故障」と入力すれば、関連する対応手順を要点にまとめたテキストと、参照すべき動画リンクをあわせて表示します。「ピアス着用OK?」と尋ねれば、服装・身だしなみに関する規定の該当箇所を引用して回答します。問いの表現が曖昧でも、文脈から最も近い意図を解釈し、答えにたどり着けるように設計されています。

多言語にも対応しており、外国籍スタッフが母語で問いかけることができます。主要7言語以上に対応し、複数の母語を使うメンバーが、同じナレッジソースから回答を得られる仕組みです。

もうひとつ重要なのが、ChatGPTのような汎用AIではなく、自社のマニュアルを最優先で参照するAIであるという設計思想です。一般論を先に返すのではなく、自社の規定・自社の動画・自社のオペレーションに沿った回答をまず提示し、社内に該当する情報がない場合にのみ一般的な知識で補完します。これにより、回答の大半は自社のオペレーションに沿った内容となり、業務利用における誤回答リスクを根本的に下げる構造になっています。

また、回答は該当マニュアルや動画を並べるだけでなく、コンテンツの中身を要点として整理したテキストを先に返し、必要に応じて元のマニュアルや動画のリンクを添える形式をとります。スタッフは要点をすぐに把握でき、深掘りしたいときだけ動画で詳細を確認できます。

加えて、業務外の話題や人事・給与といったセンシティブな情報については回答を控える制限が組み込まれており、現場で安心して使える設計になっています。

現場で起きていること—ABILI Palが答える3つの活用類型と5つのシーン

ABILI Palが実際の店舗でどのように使われているのか。その姿は、飲食現場の日常そのものに溶け込んでいます。代表的な5つの場面をご紹介します。

  1. 機材トラブルへの応答
    「エスプレッソマシンからお湯が出ない」「スチームノズルが詰まったかもしれない」──機材のトラブルは、現場でしばしば発生します。ABILI Palに状況を入力すれば、原因の切り分けと対応手順がすぐに表示されます。バックヤードでマニュアルを探す時間を取られず、目の前の問題に集中できます。

  2. 社内規定の確認
    「ピアスをつけて出勤してもよいか」「ネイルの色はどこまで許可されているのか」──服装・身だしなみに関する規定は、会社ごとに細かく異なります。新人スタッフが店長に尋ねるまでもなく、自分のスマートフォンで即座に確認できます。

  3. クレームへの初動
    お客様からのクレームへの初動は、店舗ごとにバラつきが出やすい領域です。「こういうケースで、まず何をすればよいか」をABILI Palに尋ねれば、会社として定められた標準対応フローが提示されます。ベテランも新人も、同じ基準で初動を取れます。

  4. 接客時のルール確認
    注文の取り方、配膳の手順、特定のメニューを推奨するタイミングなど、接客に関するルールも自社固有のものが多くあります。困ったときに、現場でその場で確認できます。

  5. 緊急時の手順確認
    火災、地震、医療緊急事態などの非常時対応は、「迷っている時間がない」場面でもあります。誰でも・どの言語でも・即座に正しい手順を引き出せる仕組みは、現場の安心感そのものになります。

パイロットから本格展開、そして本導入後の改善ループ

すかいらーく様は、ABILI Palを慎重なステップで導入されています。2025年10月/11月と2026年1月/2月の2回に分けてパイロット運用と現場へのアンケートを実施。機能改修を行ったことで2回目のパイロット運用時に、高い応対品質、現場スタッフからのポジティブフィードバックを確認したうえで、同年4月に全約2,600店舗への本格展開へと進まれました。

注目すべきは、本導入後も「質問内容のモニタリング → マニュアル追加・改善」という改善ループが継続的に運用されている点です。スタッフがどのような問いを投げたか、AIが答えきれなかった領域はどこかを定期的に確認し、不足していたマニュアルを追加していく運用が行われています。

ABILI Palは導入して終わるツールではなく、「現場の問いを起点に、企業のナレッジ自体が育っていく仕組み」として運用されています。AIが答えられなかった質問は、未整備の業務知識のサインでもあります。それを補強していくことで、企業のナレッジ資産そのものが、時間とともに厚みを増していきます。

導入後見えてきた成果

ABILI Palの導入後、現場の問い合わせ対応はどのように変わったのでしょうか。

全店展開を機に、ABILI Palの利用は段階的な検証期間と比べて月間利用回数が約7倍に拡大するなど、現場での活用が一気に広がりました。スタッフが日常的にAIに問いかけ、その場で答えを得るサイクルが、すでに業務の一部として定着しています。

特筆すべきは、AIの回答のうち 約8割が ABILI Clipに蓄積された文書マニュアルや動画を参照している点です。検証期間と比べても Clip 参照率はさらに向上しており、すかいらーく様がこれまで積み上げてこられたマニュアル資産が、そのままAIナレッジとして稼働していることを意味します。

マニュアルの整備・標準化が進んでいる企業ほど、AI活用への移行は速いといえます。実際にすかいらーく様は、検証期間から全店展開へ移行した直後に利用が一気に拡大しており、マニュアル資産が整っていたことが立ち上がりの速さの背景にあります。

マニュアル資産があるからAIが効く、ロードマップとしてのABILI ClipとABILI Pal

ABILI Palの効果を最大化するポイントは、自社の文書マニュアルや動画資料が整理されていることにあります。すかいらーく様の場合、ABILI Clipに蓄積されたマニュアル資産がそのままAIの知識源となり、回答のうち約8割がClip由来のコンテンツを参照しています。

つまり、Pal導入の成否は「すでにどれだけClipの動画資産を持っているか」に直結します。マニュアル資産の整備・標準化が進んでいる企業ほど、AI活用への移行は速いといえます。

このことを踏まえると、多店舗ビジネスにおけるナレッジAI活用は、次の2段階で整理できます。

  • 第1段階:現場実行マネジメント(ABILI Clip)── 散在していた業務知識を動画化し、現場で使われる形に整える。Pal導入の前提条件となるデータレイヤー
  • 第2段階:ナレッジAI化(ABILI Pal)── 蓄積された動画資産を、現場の問いに即答できるAIエージェントに変える

ABILI Clip単体でも教育・現場実行の価値は十分にありますが、ABILI Pal導入を見据えて動画資産を整えていくことが、AI時代の現場運用において重要なポイントとなります。逆に、まだマニュアルが紙やPDFのまま散在している企業は、まず「現場で使われるナレッジの形」を整える段階から始めるのが現実的です。

なお、ABILI Clipに蓄積されたマニュアル・動画などのナレッジ基盤はABILI Palだけでなく、人事評価制度のデジタル化(ABILI Career)など他領域への展開も可能です。すかいらーく様は人事面での活用も並行して進めておられます(詳細は導入事例ページおよび人事戦略対談ページでご紹介しています)。本記事では、Pal導入の前提となる「ABILI Clip基盤」と「ABILI Palそのもの」に焦点を絞って解説しています。

なぜ今、現場ナレッジのAI化なのかー多店舗経営の新しい基準

すかいらーく様の取り組みは、外食業界に閉じた話ではありません。

小売・サービス・物流・介護・保育など、フロントラインに多数の非正規スタッフを抱える業界は、すべて同じ構造的課題に直面しています。労働人口の減少、外国籍人材の比率上昇、世代交代の加速──こうした変化のなかで、ナレッジを「人」に依存させ続ける運用は、もはやリスクでしかありません。

一方で、現場の業務知識はその会社固有の競争優位の源泉でもあります。新人がベテランと同じ品質で動けるか、外国籍スタッフが自然に戦力化されるか、緊急時に全店舗が同じ初動を取れるか──こうしたオペレーションの均質性こそが、ブランドの強さを支えています。

だからこそ、「自社のナレッジを、自社の専用AIで使い倒す」という設計が選ばれます。汎用AIに自社の業務を委ねるのではなく、自社のマニュアルだけを参照するAIエージェントを持つ。この発想は、多店舗経営における新しい標準になっていく可能性が高いと考えています。

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