株式会社すかいらーくホールディングス様
人事戦略対談

なぜ、すかいらーくは「人手不足」にならないのか?
10万人の定着を生む、常識破りの人事戦略

  • 「人手不足」ではなく「多様な人材への先行投資」
    危機対応でなく、未来を見据えた環境整備を推進
  • 評価軸を売上から「個人の能力」へ抜本転換
    管理職不要で年収1,000万円を目指せるキャリアパスを新設
  • ABILI Careerで10万人の評価をデジタル化・可視化
    評価の公平化が自発的学習と定着率向上につながった

左:植原 慶太 ClipLine株式会社 取締役CSO
三菱総合研究所にて産官学のクライアントへのコンサルティング業務に従事。2018年にClipLineに入社、

カスタマーサクセス全体統括を経て現在はABILI事業部の責任者を務める。

右:下谷 智則 株式会社すかいらーくホールディングス 人事総務本部 デピュティマネージングディレクター
株式会社ジョナサンでマネジャーを経験後、人事部門へ。現在は人事制度やペイロールなどを担当。

外食産業=人手不足という定説が叫ばれる中、すかいらーくグループの現状は少し異なります。「当面の人員は充足している」。そう語るのは、株式会社すかいらーくホールディングス 人事総務本部の下谷様です。同社がいま、採用のその先に見据えているのは、未来に向けた「今働く人たちの働きがい」の追求でした。なぜ同社は人材難の波に飲まれず、職場環境の改革に注力できるのか。その独自の人材戦略について詳しくお話を伺いました。

人員が充足している今だからこそ、今と未来の多様性に投資する

植原: 今日はすかいらーく様の人材獲得や定着のポイント、今後のご展望などについて伺いたいと思います。まず、下谷様のご経歴をお聞かせいただけますでしょうか。

下谷: 私は1995年に株式会社ジョナサン(当時の社名はジョナス)に入社し、10年ほど店舗でマネジャーを経験した後、人事部門に配属されました。その後、ジョナサンがすかいらーくに統合されてからも一貫して人事領域で経験を積んできました。現在は人事総務本部のデピュティマネージングディレクターとして、主に人事制度やペイロールなどを担当しています。

植原: 外食産業の人材について伺いたいと思います。世の中では人手不足が言われていますが、すかいらーく様ではこの状況をどのように捉えていますか?

下谷: 長期的に見れば労働人口の減少は避けられませんので、様々な対策が必要です。ただ、直近のアルバイトの採用は非常に好調で、正社員も含め、人手不足感はやや収まっています。

よく取材で「人手不足で大変ですよね」「この施策は人手不足対策ですか?」と聞かれますが、正直なところ一旦落ち着いています。ただ将来的には必ず労働人口が減少するので、今のうちに外国籍の方や、シニアの方、障がいをお持ちの方など、多様な人材が働きやすい環境づくりを進めているところです。

「店長のまま年収1,000万円」の衝撃。売上から個人の能力へ評価軸の大転換

植原:採用に苦労されている企業様が多い中、この状況にいられる要因をどのように分析されていますか?

下谷: 少し遡りますが、コロナ禍においては営業面や採用数は厳しい状態だった一方で、Webを活用したミーティングや教育が浸透したことは、多店舗展開している当社にとって大きなメリットでした。コロナが明けてからは対面の良さにも改めて気づき、今ではハイブリッド型で「ここは対面、ここはWeb」という使い分けができるようになりました。これが定着にも繋がっていると思っています。

植原: まさにDXのお話ですよね。さらにすかいらーく様では様々な人事施策を展開されていますが、正社員向けの施策で特に力を入れている部分はどこでしょうか。

下谷: 定年退職の方の割合も一定程度発生するような時期になってきましたので、基本的に採用は止めてはいけないんですが、今年、人事制度を大きく変更したのが一番の変化かと思います。これまでは店舗の売上規模などを基準に評価や処遇を決めていましたが、売上のトップラインが上がりにくい環境の中で、マネジャー(店長)個人の能力をいかに高めていくかという評価軸にシフトしました。

また、これまではマネジャーの等級には制限があり、それ以上の処遇を得るためには管理職になる必要がありましたが、このキャップを外してマネジャーのままでも上位等級を目指せる制度を新設しました。いわゆる「1000万円の年収が目指せる」キャリアパスです。

本部スタッフについても同様に、管理職にならなくても専門性を高めることで上位等級を目指せるようにしました。これにより、長期間勤める中で成長実感を得られる機会を増やし、同じ職種でもキャリアを伸ばせる道を作りました。

植原: 社内でのキャリアパスの選択肢を増やす狙いがあるということですね。

下谷: はい、まさにそうです。

「昇給の決裁権」を本部からマネジャーへ。
現場が評価できる納得感がスタッフの定着を生む

植原: クルー(アルバイトスタッフ)についてはいかがでしょうか?

下谷: クルーについても様々な施策を展開しています。例えば「クルーポイント」という制度では、週末やイベント時に働いてもらうとすかいらーくで使えるポイントを付与し、週末の稼働率向上を図っています。また「スポクル」と呼んでいる単日バイトの内製化も行いました。これは登録したクルーの方に、隙間時間があるときに働いてもらう仕組みです。

しかし最も大きな取り組みは、号数制度(昇給昇格制度)の変更です。マネジャーの上司である営業部長の承認を必要とせずにマネジャーの裁量で昇給できる号数のピッチを増やし、上限も高めました。これによって店舗マネジャーが主体的に組織づくりできるようになり、現場からも好評です。

4月から始まった制度なので効果検証はまだこれからですが、店舗の定着率と店舗あたりの平均在籍人数は継続的に上昇しています。

10万人の評価プロセスを完全可視化。
「オープンなプラットフォーム」が従業員の安心と定着を生む

植原: 評価制度や給与体系の変更はかなり大きな改革だったと思います。こうした施策は人事総務主導で進められているのでしょうか?

下谷: そうですね。現場やトップの思いが噛み合わないと施策はうまくいきませんが、全体としては「まずやってみる、失敗してもいい」という姿勢をトップが後押ししてくれていることが大きいです。また、コロナ禍を通じて、これまで紙でやっていたことや対面で行っていたことをデジタルに置き換えることで、効率的かつ効果的に業務が行えるようになりました。

評価についても、紙で管理していたものがABILI Careerを導入しデジタル化されたことで、評価プロセスが可視化され、「オープンな仕組み」になりました。評価者側にはプレッシャーがあるかもしれませんが、従業員にとっては「しっかり評価してもらえる」「教えられることにブレがない」「認めてもらえる」という安心感があり、定着に繋がっています。

植原: 様々なDXを進めてきて、現場の適応力も上がってきたということでしょうか?

下谷: 完全にそうとは言えませんが、一定の効果はあります。何かを変えることへの抵抗はどんなに良いシステムでも必ずあります。ABILIがうまく導入できた背景には、事前準備がきちんとできていたこと、先行店でのトライアンドエラー、丁寧な説明会の実施、導入後の問い合わせ対応の充実があったと思います。対象が10万人ですので完全にスムーズとは言えませんが、この規模の変更としては成功していると考えています。

植原: 制度変更とシステム導入を同時に進められたことも良かったのではないでしょうか。

下谷: その通りです。一緒だったからこそうまく浸透したと思います。デジタル化せず、紙のままで制度だけ変更をしても同じ効果は得られなかったでしょうね。

「人件費の抑制」から、180度の方針転換。
コスト管理ではなく“人への投資”のためにデータを使う

植原: マネジャーの評価基準も変わり、お店の収益力とお客様満足を重視する方向になっていますね。複数店舗を任されるマネジャーも増えていくと思いますが、そのためのデータ活用についてはどうお考えですか?

下谷: ABILI導入によって「店舗力」が可視化されるようになりました。例えば36人のクルーを中心とした店舗の「スキルレベル」がどの程度なのかが把握できます。これまでは店舗では把握できていても本部で集約することができませんでした。今はマネジャーが複数の管轄店舗の状況を一目で確認できるようになり、本部でも全体を把握できるようになりました。これは複数店運営を支援する強力なツールになっています。

植原: データの連携や統合についてはどのようにお考えですか?

下谷: 優先順位は高いものの、まだ様々なシステムにデータが分散している状況です。店舗のシステムや人事給与システム、個別のITツールなどそれぞれにデータがあるので、これらを集約し、常に同期が取れる形を構築することが必要だと考えています。

植原: データ活用は、オペレーションよりもマネジメントの変革という側面が強いですね。

下谷: おっしゃる通りです。3年前までは人件費を含めたコスト抑制が重視されていましたが、トップが方針を大きく転換し「店舗中心経営」を打ち出しました。人に投資して従業員満足度を上げ、それが売上増につながり、継続的な賃上げを実現するという好循環を目指しています。このシフトチェンジに伴い、求められるデータも変わってきています。

「友人を呼べる職場か?」が究極の指標。採用よりも「定着」を選ぶ、シンプルな経済合理性

植原: 最後に人材領域やDXについて今後の展望をお聞かせください。

下谷: 大きな言葉になりますが、「あらゆる方が働きやすい、働きがいを持てる職場」を実現したいと考えています。採用と定着のどちらが大切かと問われれば、定着です。採用してもすぐに辞めてしまうのは非常にもったいない。

当社では友人紹介制度に力を入れていますが、友達を紹介できる職場というのは、本当に働きやすく働きがいのある職場だと思います。そこを目指していろいろな人事施策を打っていく必要があります。

女性の活躍も重要な課題です。新入社員の4割は女性ですが、ライフイベントを経ても最後まで働き続けられる職場づくりが必要です。さらに、正社員もアルバイトも「生産性向上」という言葉は避けて通れません。個人個人の能力を最大化して活躍していただけるよう、継続的に取り組んでいきたいと思います。

「働きたい」と思ってもらうためには、現場に人が揃っていなければならず、きちんと評価し認める仕組みが必要になります。人事はそうした後方支援を担い、結果として店舗がいい状態で運営できるようにしていきたいと考えています。

植原:お客様満足と店舗の収益力を連動させていくというお話があったのと関連して、店舗が働きたい職場になっているかとの連動がきちんとデザインできていくと、人事の施策がどの方向に進んでいくべきか見えてくるのでしょうね。今日はありがとうございました。

バナーを閉じる

CONTACT

サービス業の多拠点ビジネスのお悩みを
ABILIに相談してみませんか?

サービス資料やお役立ち資料は
こちら

プランや料金などお気軽に
お問い合わせください

ISMS_ANAB_ISMS-AC
ページトップへ戻る