“やり切る文化”で実現したV字回復、
愛され続けるブランドを支える変革のプロセスとは
<事例セッション①>
クリスピー・クリーム・ドーナツを愛され続けるブランドにした変革の全容
若月社長に聞く改革と成果創出のキーポイント
クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社
代表取締役社長 若月 貴子様
ClipLine株式会社 代表取締役社長 高橋 勇人
ClipLine株式会社 取締役COO 金海 憲男
1つ目の事例対談セッションでは、社長就任後連続で前年同月比越えを達成されているクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社 代表取締役社長若月 貴子 氏が、顧客満足度をいかに向上させV字回復を実現してきたのか、変革のプロセスを具体的に伺いながら、成果創出のキーポイントを伺った。
2006年日本上陸以降大ブームと共に華々しく展開を進めていたクリスピー・クリーム・ドーナツであるが、既存店の売上高は右肩下がりの状態が続いていた。
2015年度に地方店舗の閉店と経営資源を関東・東海・関西の大都市圏に集中させるという「選択と集中」へと舵を切り、マネジメントのテコ入れ・変革に着手し、2017年8月より既存店の売上高100%越えを連続して達成するようになった。
2016年度以降の改革のポイントとして若月氏は、
を挙げた。
クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンにおける営業組織の革新は、属人化されたマネジメントの立て直しに始まり、組織全体でのビジョンの共有と顧客満足度を軸にしたマネジメントサイクルの確立まで、一貫した改革の流れの中で展開された。
現場と経営の足並みを揃えるために、まずはミドルマネジャーを全従業員対象の挙手制で募り、フェアな手続きを通じて若手を中心に登用。組織として目指すべき方向性をディスカッションを交えながらミドルマネジャーに共有することで、現場と経営層との間に強固な連携を築き上げた。
並行して、従業員一人ひとりが自分事として捉えられるよう、会社が目指すビジョンを具体的に語り、変革に対する取り組みを従業員と共に話し合う場を設けた。従業員が主体的にビジョンの「言語化」を行い、現場の「やらされ感」が払拭されることで現場レベルでの自発的な変革を促した。
加えて、組織改革のKPIを「既存店売上高」「お客様満足度」「従業員満足度」と設定し、店舗改善を進める際の起点として機能させ現場の納得感を得ることで、組織全体での機動的な改善体制を構築していった。
一連の取り組みの成功のカギを若月氏は次のように述べた。
「弊社は教科書に書かれているような基本的なことだけしかやっていません。顧客満足度調査を起点にした改善取組や、営業組織の再構築、新商品の開発など、決めたことを徹底的に追求し、障害に直面した際には原因や元々の目的に立ち返ることで、成功するまで取り組んでいます。」
そうした”やり切る文化”を維持する上で、時に若月社長自身がプロジェクトに入り込み、原因に立ち返った上で戦略をぶらさず戦術を変えながら判断がつくまで取り組みを進めること、プロジェクトを推進するIT部門を社長直轄とし、実行力と機動力を確保していることを成功のポイントとして挙げた。
現場の人手不足は避けられない中、「人数が減っても従来のオペレーションレベル・売上・顧客満足をどのように維持・向上していくか」が大きなテーマだと若月氏は語る。
「我々はドーナツを売ってお腹を満たすのではなくて、ドーナツを通じてお客様に“Little Joy”(小さな喜び)をお届けするブランドです。それを実現していくために、オペレーションエクセレンスと、エンゲージメントの2つを重視していて、それが揃うと顧客に大きな付加価値を生み出せると思っています。そのうちオペレーションエクセレンスはABILI Clipの活用も含め一定のレベルで追求できていると感じています。今後はエンゲージメント、自分がブランドに貢献しブランドを作っているという愛着のある気持ちに一人ひとりが思ってもらえることをより重視したいと考えています。」
前述の改革のプロセスや現状進んでいる取り組みの中で、ABILI Clipは主に下記のような形で活用されている。
・顧客満足度向上につながる因子の特定とオペレーションの磨き込み
・施策の落とし込みと現場徹底につながるマネジメント
・店舗でのトレーニング・ナレッジシェア
本部からの新しい取組やオペレーションについての情報発信、教育コンテンツなどの動画を活用した取り組みや、レポート機能を用いた店舗現場での実践の様子の遠隔モニタリングなどを行いマネジメントを最適化することで、オペレーションエクセレンス/エンゲージメントの両面をカバーしている。
改革の起点となったABILI Clip等のデジタルツールを用いた顧客満足度向上の取り組みについては、オペレーション毎の満足度と総合満足度の相関関係を分析することで、顧客満足度に直結するオペレーションの見える化を実施。
そこに先述したビジョンやサービス哲学と分析結果を結び付け、クリスピー・クリームとして実現したい接客フィロソフィーを一連のストーリーにして組織に浸透させた。
店舗の重要KPIである顧客満足度の推移をトラッキングし、結果と併せてスタッフに共有している。結果の共有にとどまらず具体的な改善ポイントがあれば、改善するべき接客をスタッフ一人ひとりに投稿してもらうことで、オペレーションの徹底も実現している。
施策展開に関しても、毎月のキャンペーン商品や重点施策の内容や、店頭での陳列、売り場づくりの”お手本”を本部から発信し、各店舗で実践した内容を撮影、本部にレポートとして投稿する仕組みを構築。着実な理解と施策の徹底、マネジメントの最適化を実現した。
他にも、マーケティング担当者が商品開発の狙いや熱量を動画化して、直接店舗スタッフに配信することで、店頭での顧客体験に繋がるスタッフの商品に対する理解や応対レベルの向上を促している。
オペレーションエクセレンスを生み出す店舗でのトレーニング/ナレッジシェアにおいては、就業前のオリエンテーションからレジ・接客・清掃など一連の業務をカリキュラム化し、
新人スタッフが自己学習できる環境を構築することで、早期戦力化・従業員満足度向上も実現している。
文字だけでは伝えづらい調理法も動画で展開している。現在看板商品になっているバーナーを使ったメニュー「ブリュレ グレーズド」の正しいオペレーションを映像で配信し、実演する様子を投稿してもらうことで、店舗での調理工程で大きく品質が左右される商品の品質の安定と向上を実現した。
「ABILI Clipの評価ポイントは双方向のコミュニケーションが出来る点です。お手本を踏まえてスタッフ一人ひとりの動作を動画で返して投稿してもらうことで、オペレーションエクセレンス・エンゲージメントの両面において効果を発揮できています。」と若月氏は語った。
ツール活用においても効果最大化のために”使い倒す”ポリシーのなか、しっかりと社内コミュニケーション、マネジメントのプラットフォームになっている実感があるという。
また、今後の展望として「製造現場への活用」を挙げた。外国人スタッフも増えている中、動画を通じた製造オペレーション品質の向上を目指している。ABILI Clipに実装された「AI翻訳機能」にも注目しつつ、さらなる活用への期待を寄せた。
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