離職率が高い原因は何か?アルバイトの離職率を下げるために取るべき対策
あらゆる業界で人手不足が課題となる中、生活密着型のサービスを提供する店舗や拠点などの現場では特に、外国人の採用拡大、ロボットやIT機器を活用した省人化施策が進められている一方、
最低賃金の大幅な引き上げなど、企業では更なる負担が求められています。
特にアルバイトを中心とした非正規従業員の確保や離職率を下げる最良の策は、給与の向上ですが、これは非常に難しい問題です。いくら現場スタッフ、アルバイトの給与を上昇させようにも、サービス業の一人当たりの生産性は決して高いものとは言えず、なかなか給与に反映させるのは難しいでしょう。現実論としては正社員と同様の給与を支払うことは、アルバイトやパートの生産性をあげる必要があり、これは非常に困難です。世の中のスーパーやファミレス、コンビニやファストフード店など多くのサービス業においてアルバイト従業員は欠かせない存在であり、これらの従業員の給与を一斉に向上させてしまえば、ほぼ全てのサービス産業において経営を行うことは困難になります。
つまり、パートやアルバイトの賃金をできる限り抑えつつ、生産性を向上させ、いかにして離職率を下げるかが鍵となります。
離職率とは?離職率の計算方法と調べ方を解説
離職率という数字が盛んに論じられますが、離職率は正確にはどのような計算式で求められるのでしょうか。もっとも一般的な厚生労働省の定義する離職率の定義によれば、「常用労働者数に対する離職者の割合」と定義します。さらに具体的には、以下の通り計算します。
離職率 = 離職者数/当年1月1日現在の常用労働者数×100(%)
大まかに言えば、年始時点の会社規模を基準に退職者数の割合を測るということで、至極妥当な計算方法かと思います。
さて、この離職率という概念ですが、高いのがいいのか低いのがいいのか、実は議論が分かれるところではあります。ある種の会社では、会社にはある程度の新陳代謝が必要だという理屈で、それなりの離職率を是とする所もあります。甚だしい企業は、成績下位5%以下の社員は強制的に退職勧奨を受諾させる企業すらあります。
一方、多くの日本企業では、余りに回数の多い転職は中途採用の際にネガティブ要素として斟酌されるのが公然の事実ですので、従業員から見れば、「離職率の高い会社(=長くは働かせてもらえないような事情のある会社)」には入りたくない、という思考が働きます。また、一般的な企業からしても、往々新入社員への教育投資の回収が始まるのは入社3,4年後と言われており、最近は年功序列制の崩壊や管理職ポストの削減、働き方改革による残業抑制推進から若手職員の給与を低く抑えることができる時代になっているために、以前よりも低賃金で過去の教育投資の回収をさせようという選好が強くなっているものと考えられます。それ故に、一般的な日本企業も、低い離職率を選好する傾向があります。
非正規社員の離職につながる理由は何か?
ClipLine株式会社が立ち上げた社内研究所「できるをふやす研究所」は、当事者となるサービス業従事者が本当に求める時給の金額や、時給以外に離職の原因となっている事象は何かを明らかにするため、サービス業に分類される(飲食、小売、運輸、介護)の離職経験者について、非正規で勤務されていた方を対象に調査を実施しました。
(※)・調査方法:アンケートサービス登録モニターを対象としたWebアンケート調査
・調査期間:2023年7月28日~2023年8月1日・分析対象者数(回収票数):1,034
離職理由については下記の通りの結果となりました。
<解説>
「仕事がきつかった」が最も多い結果となった。2位以降に「上司や同僚と気が合わない」「職場の雰囲気が良くない」など人間関係の理由があがっており、間接的に「きつい」と感じる遠因になっている可能性も考えられる(①)。
なお、「生活の変化があった」「通勤が大変だった」「学業や生活との両立についての理解がなかった」という3項目については離職の判断をするにあたりコントロールが難しい項目と考えられるため、次ページ以降の分析対象者から除外している(②)。
また、勤続期間が短い人ほど「仕事がきつかった」と回答する割合が高くなっており、入社前のイメージとのギャップがあったり、なかなか仕事に慣れることができなかったなどの理由が考えられる。1年以上勤続している場合でも最も回答率の高い離職理由であり、自身の役割の変更や店舗の人手不足などで仕事の負荷が上がった場合、ベテランスタッフであっても離職の可能性となり得る。
反対に、「上司や同僚と気が合わなかった」など職場環境を理由とする離職は勤続期間が長いほど割合が高い。店長の異動や同僚の離職などにより自身の居心地が悪くなるとそれが離職のトリガーになる可能性がある。
今回の調査で確認した離職理由のうち、以下の場合は職場改善で防げる可能性があると考えられます。これらを離職の主な理由として選択した人が、職場改善により離職せずに済んだと仮定すると、年間の離職者の約54%の離職を防げることになります。これは経営面で大きなインパクトを生みます。
離職率を下げるために必要なこととは?離職率を改善させる新人教育で大切なこと
店舗側からすれば、新人アルバイトへの教育に対する投資効果を回収する前に退職をされてしまうことが一番避けたいことになります。離職率を下げるためには採用後1ヶ月以内の離職率を下げることが非常に重要です。
まず、アルバイト本人に起因する原因。「人間関係がうまくいかない。」「仕事がつらい。」「遊びを優先させたい。」等です。このように本人のモチベーションや気力、能力に起因する問題はなかなか雇用側で改善するのが難しいでしょう。
次に、「仕事内容がキャリア形成に役立たなそう」「求人票の内容とズレがある」「正社員になれるという約束がいつまでも果たされない」といった理由です。このように事前の条件や認識が異なる場合は、入った後に様々なトラブルを招くことがあり、離職する傾向も強いです。まずは条件面や認識を事前にすり合わせ、このようなトラブルの内容にしっかりと話し合いをすることが大切でしょう。
また、「学業との兼ね合いで時間が取れない」「通勤距離の問題がある」「時給が低すぎる」「業務内容が体力的につらい」といった理由もあります。
これらは、アルバイト従業員に働く意欲があるものの、その職場で働くことを妨げる障害があって、辞職を考えざるを得ない状況に追い込まれている人たちです。
このような意欲のある人たちは店舗側の努力次第で離職を思いとどまることもあり、いかに職場環境を改善し柔軟に対応するかが重要です。人手不足の時代ですから、いかにしてもアルバイト従業員側に寄り添うことが大切です。このような意欲のある人たちには密にコミュニケーションを取り、何が問題で改善すべきかを話し合うことが大切です。互いに本音で話し合い、妥協点を模索することが近年のアルバイト管理では最も大切です。もし店長や現場スタッフでは難しい場合は他の店舗での改善策や本部からの知恵をもらうことも大切です。
まとめ
ここまで離職率を改善するための方法についてご紹介してきました。
経営へのインパクトも大きく、安定したサービス品質の提供のためにも重要な指標のため、しっかりとした改善計画を設計することが重要です。
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